Tides_of_War

盤根錯節

特捜9 Season5 最終話「X DAY」 刑事ドラマとしては残念な回答

最終話、1クールをかけてのストーリーの終着点としては残念格差社会に絶望する犯人、似た境遇の人々を操り、秩序を破壊する一斉テロ「X DAY」を企むも、実際にテロは行われず。どうやってテロを防いだ(誰もテロを起こさなかった)のか。

 

曰く「ひとりじゃない」から、テロは起きなかったらしい。テロリストに堕ちかけていた人たちが謎の光パワーで、次々浄化されていく様には苦笑いするしかなかった。

 

絶望してる人々「俺たちは社会に絶望してる!溝口*1みたいに社会ぶっ壊してやるぜ!」

「待って!あなたたちはひとりじゃないのよ!」

「俺たちは一人じゃなかった!救われた!テロやめるぜ!」

 

刑事ドラマとはフィクションでありながら、リアルな社会を映す鏡でもある。犯人の動機や、それを取り巻くバックボーン。それらは実際に日本が抱えている社会問題が反映されていることが多い。だからこそ視聴者は犯人に憤ったり、あるいは同情する。例えば、相棒の「ボーダーライン」等が有名だろう。ところが今作では、社会への絶望に対するアンサーが「孤独な人間など一人もいない」「必ず誰かが救ってくれる」なのだ。本当に2022年の刑事ドラマなのかと疑いたくなるような、雑な回答で片付けてしまったのである。

 

そもそもテロリストを生む要素となった、1話の犯人(溝口)。確かに本人の状況は同情に値するが、犯行がそれを上回る凄惨かつ異常(土下座をさせての銃殺、大量殺人、自殺)なため、彼の犯行から同調する人が出てくるとはとても思えない。絶望の淵にいる人々にとって彼は先導者のように映るか?単なる殺人鬼にしか映らないのでは?

 

実際のところ「X DAY」が起きなかったのは、浅輪の語る「一人じゃないんだ」なんてチープなものではなく、本気で溝口に同調していた人なんて一人もいなかった。と考えるほうが、まだ納得ができる。

 

以下、シーズン5の特捜9に関する雑記。

 

ただ、それ以外の独立エピソードは良かった。そうでなければ最終話まで見ない。次があれば次も見る。

 

それと新メンバーについて。シーズン5が始まるにあたって、メンバー交代がファンを騒がせていたが、シリーズを重ねる以上避けられない。ただ、替わった人が「(前のメンバーも良かったけど)新しいメンバーもいいね」と思われるような活躍・輝きを見せてくれるかどうかが大事だと思う。

 

実質的に脱退状態だった進藤に代わって、浅輪の相棒ポジションについた高尾。彼女は特に大きな活躍も無ければ、キャラとして目立つシーンもほぼ少なく非常に影が薄かった。

 

逆にSSBCの三ツ谷は非常にいいキャラをしていたと思う。最初はただのウザキャラに感じていたが、お調子者でありながらしかし有能。特捜メンバーとのやり取りもコントのようで、いいアクセントになっていた。前シーズンまでに同ポジションを勤めていた佐久間は確かに有能ではあったのだが、それ故に彼の役割は浅輪に仕事を押し付けられるだけ。キャラクターとしての動きが皆無で、レギュラーとして出演する必要性をほぼ感じていなかった。この交代は良かったのではないか。

 

脱退した村瀬。特に嘆かれていたのが彼の脱退だが、結局準レギュラークラスには出演していた。ただ最終話で「俺はもう特捜9のメンバーじゃない」といった発言もあったので、特捜への復帰は絶望的なのか?もしそうだとすれば、次シーズン以降はさらに出演回数が減りそう。それこそ猪狩のように1シーズン1話になるだろう。ところでシーズン4で彼は脱退することが名言されていたっけ?

*1:1話の犯人